当院の施術を受けて下さったお客様からよく、「この施術は不思議ですね。今まで受けたことがないです。何という施術法なんですか?」とよく聞かれます。
長年当院にお越し頂いているお客様方も、「ずっと受けているけど、人に説明できない」とおっしゃいます。
整体というと、骨盤や頸椎、胸椎、腰椎(最近では頭蓋骨を矯正するところも増えだしました)の歪みを施術者が力を掛けて矯正するものだと思われています。
頸椎の何番が歪んでいる、足の長さが左右でこれだけ違う、とか観たてられ、骨盤や背骨を正しい位置に矯正しようとするものが、整体といわれています。
当院の整体は、そのような一般的な整体とはかなり違うことは確かです。
力を掛けて矯正するのでもない、ぐいぐい押したりするのでもない、ストレッチするでもない。今までのやり方とは違うので、皆さんどう説明したらいいのか悩まれるようです。
整体だけでなく、今世の中には実に様々な手技療法があります。
私も様々な手技療法に接してきましたが、私の方法は「○○」です、というように言えないので、身体を整える「整体」という大きな括りで表現しています。
どういうことかというと、身体には元々自分自身で病気を治癒させたり、バランスを回復させる能力が備わっていて、それが施術を通じて引き出されていくのを、長年この仕事をしてきて目の当たりにしてきたからです。
こう書くと、ますます分からないかもしれませんので、長くなりそうですが、これまでの私の体験をお伝えしてみたいと思います。
施術者プロフィールにも書きましたが、私は自分自身が幼少期から様々な不調を抱えていました。幼稚園に通う前から、背中に激痛があり、夜寝るときあまりにも痛くて毎日枕を背中に当ててブリッジして凌いでいたり、ひどい便秘がありました。(子供なのに!)
小学生になると、運動が苦手で、走るのが遅かったり、息が苦しくて泳げなかったりしました。中学になると、ひどい腰痛と、毎月激痛に襲われる、生理痛、トイレにいってもまだ行きたい頻尿に苦しみました。
高校になると、腰痛はさらに悪化し、脚のしびれや、原因不明の発熱、息苦しさ、精神的には感情のコントロールができず、ひどくイライラしたり、夜になると死にたいほど悲しくなっていつも布団の中で泣いていました。
整形外科や、泌尿器科、整体など色々な所に行きましたが、症状は悪化する一方で、社会人になると電車の中で頭が真っ白になり、痺れてくるような感覚と、息苦しさを伴うパニック症状が出るようになってしまいました。食事も全く受け付けず、拒食にもなりました。身体は鉛のように重く、うつ状態も悪化して、激しい落ち込みと、いつも死にたいという思いがありました。
(まだその当時は心療内科がなく、うつ病やパニック障害は一般的ではありませんでした。)
そんな時、交通事故でむちうちになって入院した後、ずっとリハビリに通っていましたが、一向に良くならない時に会社の人が整体を紹介してくれました。
そこで施術を受けることになり、そのうちに院長に整体の仕事を勧められてこの道に入りました。
その当時、先代はカイロプラクティックの手技で施術をしていましたが、カイロは日本人の身体に合わないと、独自の筋肉の弛緩法を模索していきました。
(私もそんな敏感な身体でしたから、いくら先代が矯正が上手くても、力を掛けてバキバキされるのが怖かったものです)
その中で、身体が自ら(意思とは関係なく)動いて緩めていく、という現象がでる方が何人かいらっしゃいました。
運動には随意運動と、不随意運動があり、随意運動は自分の意思で動かす経路で、錘体路系といいます。
不随意運動は意思とは関係なく、身体が姿勢を保持するために自動的にバランスをとる経路で、この錐体外路系が活性化されると不随意運動が生じて、身体が自ら緊張を緩めたり、バランスを整える、ということを施術を通じて患者さんの身体が教えてくれました。
私自身も先代の施術を受けてきた中で、自らの身体が色んな動きがでるようになりました。最も私の場合は、長年親との関わりで、ものすごいストレスを感じてきたことから、身体と心にたまった緊張で全身が鎧のように凝り固まっており、それが解放されようとしてきた時に、すごい力となって引っ張り出したり、硬直したりしたので、かなりはじめの頃は辛かったものでした。
それも徐々に身体の殻が一つ一つ解けてくると、どんどん身体も心も解放されて、生まれ変わったように感じたものです。
私の場合は極端ですが、人はストレスが掛かりすぎると、身体が緊張し、それが抜けないと様々な不調を引き起こすわけですが、それを元に戻そうとする働きも持っている、ということを自分自身の身体と、お客様の施術を通して体験してきました。
それは不調にならなくても常日頃誰でもやっていることで、例えば貧乏ゆすりや、欠伸なども不随意の自己調整の一つです。
何らかしらのストレスが掛かったときに、そうやって自己調整をしてバランスを回復させていれば問題にならないわけですが、現代社会はあまりにもストレスが多く、人間の調整能力が追い付かなくなっていたり、鈍ってしまったり、発揮できなくなっていると最近つくづく感じるようになりました。
その為、不調を抱える方が多く、これだけ様々な手技療法が流行っているのだと思います。
当院はその方が元々持っている、バランスを回復させる自己調整力を呼び覚まして活性化するお手伝いをする、という施術のあり方です。
言うならば、その方の身体の本来の働きに任せた調整です。
身体は自らどうして緊張したのか、不調なのかを全部知っていて、その緩め方、調整の仕方も知っています。なので身体に刺激を入れると、同じような刺激や触れ方をしても、一人一人調整の動きが全く違いますし、その方も毎回同じ現象が出るわけでもなく、その時々で違う調整を身体がやります。
皆さんの動き、調整を見ると、本当に複雑です。回したり広げたり、ゆすったり、うずくまったり、溜めて抜いたりと、言葉では何とも表現できないほど複雑で多様性に富んでいます。
また、呼吸を大きくしだしたり、涙が出たり、中には色んな色が見えて、出たり消えたりする、という方もいます。
目に見えた動きだけでなく、内面で静かに変化することも勿論あり、流れや全身のつながりを感じてそれを教えてくれる方もいらっしゃいます。
そのような身体の働き、調整力を目の当たりにすると、施術者ができるのは、その方の本来の調整力を発現させるきっかけになるぐらいだと痛感します。
そして、益々身体の不思議さを実感し、生命の凄さ、神秘性を感じます。
本当に人間の身体はすごいです。
それを皆様と共に探究し、問いかけ、味わい、分かち合えることが何より楽しいです。
そして自分(身体)が今こうして生きている、生かされていることに何とも言えない感謝の気持ちが湧いてきます。