図書館で借りた本を返そうと、二駅となりの図書館に行きました。
ふっと入り口の子供コーナーに足が止まりました。
「これから自分が本当にやりたいことは何?」
「一番伝えたいことは?」
「どんな方法がある?」
そんなことを考えていた時、施術を通して伝えたいことのほかに、
「やっぱり私もぴよこの絵日記を絵本にしたい!」
という思いが湧きあがってきました。
そんな時だったので、本棚に並んだ本を読んでみたいと思いました。
絵本をひらくなんて、何時以来のことでしょう?
どれを手にとっていいか戸惑っていた時、
大きい、真っ赤なリンゴの絵が目に飛び込んできました。
その隣に柔らかいタッチで描かれたおじさんが、優しく微笑んでいます。
タイトルは『りんごのおじさん』
すぐにあの有名な方では?と思いページをめくると、やはり青森のリンゴ農家の木村秋則さんのお話でした。
木村さんは農薬を沢山使ってりんごを作っていた時、奥さんが具合が悪くなり、このままでは身体を壊してしまうと思い、農薬を使うのをやめたのでした。
薬を止めると、すぐに虫が付き、木が病気になって花が咲かなくなりました。
りんごの実がならなくなって、暮らしも大変だったそうです。
周りの人から苦情や批判的な意見を言われても、木村さんは農薬を使うことはしませんでした。
でも、5年目にはとうとうりんごの木は徐々に枯れていきます。
毎日りんごの木に向かって、話しかけていたのに。
がんばれ、がんばれ、もうすこしだ。
げんきな つよい きに なってくれ。おねがいします
私は自分自身が不調で弱っていた時のことと、施術に来て下さっている方々のことを重ねていました。
今、当院に来て下さっている方の中には、長年薬を飲み続けて、副作用にも悩まされ、思い切って薬をやめた方が何人もいらっしゃいます。
薬を止めると、初めは離脱症状が出て、大変な思いを味わうことも少なくありません。
私自身も幼少時以来、心身共に様々な不調に悩まされ、縁あって先代に施術をしてもらってから、それまで溜め込んでいた緊張がゆるんで解放されていくと、好転反応で辛い症状がどんどんでてきた時がありました。
こんなに辛いなら、もういっそ、死んでしまいたい、
と何度も弱気になって口に出したとき、先代は
がんばれ、がんばるんだ!もうすこしだ!
げんきになるんだ! つよくなるんだ!
からだはげんきになろうとしているんだよ!
と励ましてくれました。
ひどい時には、昼夜を問わず施術してくれ、自分のことのように私の苦しみにずっと寄り添ってくれたのに「死にたい」なんて言われて、どんなに先代は辛かったことだろう。
あの時の先代の魂から振り絞るような、叫びにも似た励ましの言葉を思い出して、胸にこみ上げてきました。
そこに、今施術に通ってきて下さる方へ、私が一番伝えたいことが重なりました。
これでよくなるはずだ、と思っていても、離脱症状や、好転反応が出てくると、
本当に大丈夫なんだろうか?と本人も周りも心配になります。
どうしていいか絶望的になることもあると思います。
そんな時、木村さんがそうだったように、希望の光になったのは、
「自然の叡智」
でした。
山の木が薬も肥料もやらないのに、元気なのはなぜだろう?
と考えて、柔らかい土を作ることから始め、それから試行錯誤の末、やっと9年目にして実ったりんご。
それは いままで たべたことのない おいしさでした
くすりも ひりょうにも たよらずに
じぶんの ちからで はなを さかせ
じぶんの ちからで みのった
げんきな げんきな りんごのあじでした
「よくやったな よくがんばってくれたな
ありがとう ありがとう」
身体には元々自分自身で健康を回復させる力があります。
自分の力で元気になれる、生命力があります。
そして、自分の人生に花をさかせ、実を実らせる力があります。
ここまで元気になってくれた、自分の身体。
どんなに辛くても、いつも黙々と働いてくれているこの身体。
今、必死に元気になろうとしている方々の身体。
今までの殻を破り、自分の人生を取り戻すチャレンジをしている方たちに
一番伝えたい言葉。
そして、きっと先代が言ってくれているだろう、この言葉。
よくやったね!
よくやってくれて、ありがとう!!
木村さんの晴れ晴れとしたお顔、りんごの木への深い愛情が伝わってきて、涙があふれてきます。
そして、最後の木村さんの言葉に、心底共感します。
「おじさんの つくった りんごは おいしいね」
そういわれると、いつも おじさんは こたえます。
「わたしが つくったんじゃないんだよ。
りんごのきと、つちと、みずと、おひさまと・・・
みんなが ちからを あわせて できたんだ
わたしは、それを ちょっと てつだっているだけなんだよ」
絵本の中の木村さんの言葉と、生き方に、勇気と元気をもらいました。
これからも私なりに施術を通じて、皆さんと共に力を合わせて身体の叡智を分かち合い、元気になれるお手伝いをさせていただきたいと思いました。